【Libraアイ 弁護士コラム】協議離婚をしようとする時に気をつけるべきこと
リーブラでは、弁護士による各種講座や相談室では法律相談を実施しています。
Libraアイでは「弁護士コラム」として、弁護士の皆さん(持ち回り制です)がテーマを設定し、情報提供していただきます(不定期)。
今回のテーマは「協議離婚をしようとするときに気をつけるべきこと」です。
協議離婚をしようとするときに気をつけるべきこと
「離婚をする」となった際、裁判所の手続を介さずに、夫婦双方の合意のもと離婚届を提出して成立させる協議離婚。
日本では約9割の離婚が協議離婚といわれています。
「夫婦双方の合意のもと」ではありますが、後々の紛争を防止するために、離婚届を提出する前に夫婦間で定めておくべきことがあります。
大きく分けると、「財産に関すること」と、「子がいる場合には子に関すること」です。
以下の事項については、夫婦間で取り決めた場合には、離婚協議書を作成し、公正証書にすることが望ましいです。
1.財産に関すること
■財産分与
■年金分割(厚生年金・共済年金のみ、合意後に年金事務所での手続も必要)
■慰謝料(請求する意思がある場合)
2.子に関すること
■親権
■養育費
■面会交流
<1.財産に関すること>
■1―① 財産分与
財産分与は、婚姻後の夫婦各々が得た財産について、原則的に夫婦の共有財産となるということを前提に、離婚時に、婚姻期間中に形成された財産を2分の1ずつ取得し清算するというものです(扶養的財産分与というものもありますが、今回は省略します)。
■1―② 年金分割
年金分割も、婚姻期間中に納められた厚生年金・共済年金を夫婦の共有財産として、離婚時に分ける制度です。特に、一方が専業主婦(夫)であった場合には、年金分割の手続の有無が将来の受給額に大きく影響します。
一方が扶養に入っていた期間については、「3号分割」といって、合意不要で、2008年4月1日以降に納めた保険料に対応する年金の50%を請求できます。扶養に入っていても2008年3月31日以前の分がある場合、扶養に入っていない期間がある場合、夫婦共働きであった場合には、50%を上限として、話合いによって分割割合を定める「合意分割」の方法をとる必要があります。それぞれ、年金事務所で年金分割を請求する必要があります。
■1―③ 慰謝料
慰謝料は、協議離婚の場合には取り決めをしないこともありますが、例えば、不貞行為やDV・モラハラ行為等がある場合には、慰謝料を請求することが可能なケースもあります。話し合いによって慰謝料の額が定められない場合には、弁護士に相談することをお勧めします。「慰謝料」という名目ではなく、相手の受け入れやすさの観点から「解決金」という名目で支払う金額を定めることもあります。
<2.子に関すること>
■2―① 親権
2024年3月現在では、提出の際に親権者が確定していないと、離婚届は受理されません。争いがある場合には、離婚調停を申し立てます。
■2―② 養育費
離婚成立後に、交渉や調停・審判によって子の養育費を請求することも可能ですが、養育費の支払いの滞りを未然に防止する意味でも、予め、養育費とその支払い方法を夫婦間で定めておくべきです。相場がわからない場合には、裁判所の養育費算定表が参考になります。調停を申し立てた場合にも一般的にこの算定表が使われます。
■2−③ 面会交流
共同養育の意思が双方にある場合でも、離婚後の事情の変化に備えて、面会交流の頻度や条件を定めておくと安心です。
<離婚協議書を公正証書にしておくと安心>
上記の事項について取り決めをしたら、離婚協議書を作成し、かつ公正証書にしましょう。公正証書にしなくとも、合意の証明にはなりますが、取り決めについてその履行を確保したい場合には、「強制執行認諾文言」を付した公正証書が有効です。
「強制執行認諾文言」を付した公正証書があれば、調停や審判などの裁判所の手続を経なくとも、強制執行をすることができるようになります。もっとも、面会交流等の金銭以外の取り決めについては、公正証書で具体的に定めていたとしても直接執行をすることはできず、争いが生じた場合には裁判所に申し立てをしなければなりません。
離婚後、「こうすればよかった」「これを決めておかなくてはいけなかった」などなど、後々の紛争になると大変です。しっかり情報をもって手続きを進めていきましょう。
弁護士(第二東京弁護士会所属)久道瑛未
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