【発達障害と夫婦不和】第1章 アスペルガーの夫をもった妻のたどる道のり②~アスペルガー夫を配偶者に持った妻が辿る経緯~
リーブラ相談室では、月に1回の「夫婦・家庭問題専門相談日」を設けています。離婚や別居、夫婦関係の不和、それに伴う子どもへの影響や子どもへの対応などのご相談を受けている元家裁調査官(臨床心理士)が、皆様のご相談のヒントとなる情報をコラム形式でお伝えしています。
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▶ 【第1章】アスペルガーの夫を持った妻のたどる道のり① ~アスペルガーの夫の特徴とは~
前回は第1章の①としてアスペルガー夫の特徴をみてきました。今回はそんな夫を配偶者に持った妻が辿る経過の「例」を順にみていきます。
【第1章】アスペルガーの夫をもった妻のたどる道のり②
~アスペルガー夫を配偶者に持った妻が辿る経緯~
<妻が夫のアスペルガーに気付くとき>
こんな特徴を持った夫との生活に疲れた妻が、夫の発達障害を疑うには色々な経過があります。例えば、自治体に離婚の相談に訪れたら、「あなたのご主人はアスペルガーかもしれませんね。」と言われる、また、子どもの発達障害を疑って専門医に相談し質問に答えていると「あれ、全部夫に当てはまる・・・」と気がつくこともあるでしょう。
ただ夫に対し、「あなたはアスペルガーだと思うんだけど。」と切り出せる妻は多くはありません。きっと夫は怒るだけ、認めないと思うからです。そのため、夫本人を病院に連れて行き、確定診断を得られる人は少なく、多くは本やネットで調べていくうちに、あれも当てはまる、これも当てはまるということになり、夫のアスペルガーを自己診断するに至ります。
<夫への理解・夫婦関係の修復>
夫がアスペルガーかもしれないとわかった時、ショックを受ける人より安堵する人の方が圧倒的に多いように思います。これまで「なんでこうなるんだろう」と思っていたモヤモヤが晴れます。そして、悪いのは夫ではなく、アスペルガーという障害だということになり、夫を憎まなくて済むのです。
そして次にやってくる思考は「夫婦関係の改善」です。アスペルガー夫の対処方法が書かれた書籍やネット記事も多く存在します。また、カサンドラの会のような自助グループに入ることもできます。そこで対処方法を学び、自分が工夫することで、夫婦関係が良好に保てるように努力するのです。
例えば、「言わなくても分かるでしょう」をやめて、きちんと言葉で表現する、子育てや育児を手伝ってほしい場合は具体的に指示する、といった具合です。
<諦め>
いくら夫がアスペルガーであると理解し、対応を変えても、夫は変わりません。そのため、生活のしにくさやしんどさは変わらないことがほとんどです。
例えば、「相手の気持ちを理解できない」という特徴で考えてみましょう。この特徴に対し、妻は、「言わなければ分からないのであれば、きちんと言葉に出して伝えよう」と思います。育児・家事を手伝ってほしいときは、大変そうなのを察してほしいではなく、「〇〇を手伝ってほしい。」と伝える、愚痴を聞いてほしいだけのときは「アドバイスはいらないから、受容的に聞いてほしいだけ」と伝える、といった具合です。しかし、ある日、突然夫が相談もなく仕事を辞めてきたらどうでしょうか?「なぜ事前に相談してくれないの?」と聞くと、「自分の仕事のことだから相談しなくていいと思った。あらかじめ、仕事を辞めるときは相談してくれとは言われてないよね。」と返事が返ってきたらどうでしょう。もう脱力です。
「言わなければ伝わらない」というアスペルガーの特徴を理解していても、対処しきれない問題がたくさん出てくるのです。
このように最初は夫婦関係の改善に前向きでも、心身ともに疲弊する生活が続いてしまうと、「どうせ変わらない」という諦めにいきつくのです。
<そして、離婚へ・・・>
夫婦関係の改善を諦めた先には何が待っているのでしょうか。中には、家庭内別居など、なるべく自分が傷付かないよう、極力接触しないという方法をとる人もいます。しかし、避けていたとしても同じ家の中にいるストレスや、生活のしにくさを感じることは続きます。夫が帰宅するドアの音を聞くと胸が苦しくなる、夫がいる間は自室から出られないので生活が不便、などです。そのような生活を続けていると、心身が疲弊し、夫婦関係を終わらせることを考え始めるのです。
私がご相談を受ける方々は、この段階に至った方々であることが多いのですが、よくある声を2つご紹介します。
①夫との同居生活で心の健康が害されそうです。仕事にも集中できません。
②不自然な家庭内別居の生活を続けることが、子どもに悪影響がないか心配です。
何とか夫婦関係を継続しようと思ったけれど、この2つのことがきっかけになって「離婚」を意識し始めます。仕事にまで影響が出てしまうと自分の生活も立ち行かなくなってしまう、自分が我慢するだけならまだしも子どもに悪影響があるなら現状維持はできない、子どもが巣立った後2人になって自分はどうするんだ、などと考えるのです。
ここまで夫のアスペルガーに悩む妻が離婚を考えるに至る道のりをご紹介しました。しかし、アスペルガー夫との離婚協議はそんなに簡単ではありません。
次回は、そんな夫との離婚協議の方法についてお伝えします。
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ここでは、「離婚」となっていますが、「自分には経済力(生活力)がないため、離婚はできないが自分が壊れる。どうしたらよいか。」「子どものために、そんな親でも一緒にいた方がよいと思うが・・」というご相談も多くいただきます。自分の人生の考え方、解決方法、道筋はひとつではないのです。
自分でどのような人生を選択するのか?
リーブラ相談室では、お話を伺うほか、自治体のサポートなどについても、お伝えしています。
一人で悩まず、専門家への相談も検討してみてください。
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